人の腸内細菌は、消化できないセルロースなどの多糖(食物繊維)を分解して短鎖脂肪酸をつくります。 短鎖脂肪酸とは、腸内細菌がつくる酪酸や酢酸などの有機酸のことをいいます。
脂肪を合成するための原料として肝臓などで使われるほか、腸内を弱酸性の環境に整えて有害菌を増殖を防いだり、炎症を抑えたりします。
肥満は脂肪細胞の内部に脂肪が蓄積され、肥大することで起きます。この脂肪細胞には、短鎖脂肪酸を感知するセンサーがついていて、そのセンサーが短鎖脂肪酸を感知すると、細胞は栄養分の取り込むのをやめ、脂肪が過剰になるのを防いでいます。
短鎖脂肪酸は脳へたどり着くと、 食欲を抑える刺激となって食べ過ぎを予防できます。脳からの食欲を抑制してくれるのです。
交感神経にも短鎖脂肪酸に反応するセンサーが備わっています。活動時に働く交感神経が短鎖脂肪酸を感知すると全身の代謝を活性化します。心拍数を上げたり、体温の上昇をさせたりして、脂肪を燃焼しはじめます。脂肪を蓄積を減らし、全身の代謝を活発にして肥満を防ぎます。
食欲を抑制するホルモンであるインクレチンを増やします。 インクレチンは食べ物が腸に到達すると、腸から分泌するホルモンです。脳に作用して、これ以上食べたくないという気持ちを起こさせます。 また、胃の消化速度を遅くするなど、食欲を抑制します。
腸内細菌がつくる短鎖脂肪酸は、未熟なT細胞の遺伝子にはたらきかけ、誤った免疫反応や過剰な免疫反応を抑えるブレーキ役の制御性T細胞の数を増やします。
そして、アレルギーを起こす障害性T細胞の攻撃機能を制御性T細胞が抑えることで、アレルギーを抑えます。
大腸の粘膜は短鎖脂肪酸のすべてをエネルギー源にしています。短鎖脂肪酸が足りなくなると、大腸の粘膜バリアが弱り、細菌から攻撃を受けやすくなります。短鎖脂肪酸を増やすことで腸のバリア機能を高めることができます。
短鎖脂肪酸を感知するセンサーは、脾臓やリンパ接などの免疫組織などにも存在します。短鎖脂肪酸は、全身のエネルギーの調節や免疫力の増強ともに密接にかかわっています。
短鎖脂肪酸がつくられる過程で腸内細菌から水素を発生し、その水素が細胞の酸化を防ぎます。すなわち、腸内細菌が糖を食べることで、水素が発生します。水素の抗酸化作用で、老化の予防や炎症を抑える働くをします。
水素ガスが多く発生する人はぜん動運動が早くなり、便通もよくなります。腸内細菌のバランスが取れていて、善玉腸内細菌がしっかり 活躍してくれる腸を持っていれば、体内でつくられる水素ガスの量が増え、さらに腸を元気にしてくれます。
腸は脳の命令ではなく腸みずからの判断でぜん動運動をしています。このぜん動運動は脳の神経系は腸に食物がきたことをその腸壁の細胞が察知し、その細胞から セレトニンという神経伝達物質を腸神経系に送り。腸管の周りの筋肉を動かしています。
セレトニンは、気持ちを安定させ、意欲を高めるホルモンでもあります。腸内環境を整えることでセレトニンの働きはさらに強まります。
短鎖脂肪酸が増やすには、やせる菌であるバクテロイデス門の腸内細菌を増やすことです。このやせ菌には、食物繊維やオリゴ糖をエサにして、短鎖脂肪酸を作り出す働きがあります。食物繊維とオリゴ糖をいっしょに摂ることによって、体内に短鎖脂肪酸が増やせることができます。
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