運動することで、筋肉は動かすことになる。だから動かした腕や足、腹筋などの筋肉が発達するのはよく理解できる。しかし、直接動かしていない胃腸や内臓までが、元気になるのはどうしてなのでしょうか。
骨格筋を動かすのも、腸の筋肉を動かすのも酸素が必要です。体の細胞にあるミトコンドリアは酸素を使って、エネルギー源のATPをつくります。
もし、酸素を含んだ血液がたりないと虚血誘導因子というアラームを各臓器に送ります。虚血誘導因子の命令を受けると、骨髄はたくさんの赤血球を作り、血管は拡張して血流を良くします。
血液の中が酸素不足になる程度の運動、すなわち虚血誘導因子のアラームが出るぐらい運動をすると、今のように血液が活性化する方向に働くことになります。
運動をすると、心臓の鼓動がはげしくなります。そうすると心臓からナトリウム利尿ペプチドというホルモンがたくさん分泌されます。また、血管からは血流が増えることで刺激を受けた内皮細胞が一酸化炭素という気体状のホルモンも分泌されます。
これらのホルモンは血管を弛緩させる作用があります。血管拡張ホルモンは血管を拡げるように働き、また筋肉にも直接働いて、筋肉の中のミトコンドリアを増やすようにします。
ナトリウム利尿ペプチドと一酸化炭素のシグナルを伝えるのは、細胞の中にある「Gキナーゼ」という物質です。
血管拡張ホルモンはミトコンドリアの燃料になる酸素をたくさん運ぶために、ミトコンドリアそのものを元気にしてくれます。
血管拡張ホルモンは、骨格筋を元気にするではなく、腸と筋肉を動かすにも必要です。運動することで血のめぐりが良くなって、腸のミトコンドリアも元気になって腸を鍛えることになります。
年齢を重ねて、筋肉が弱ってくると、筋肉を弛緩させる力、つまり収縮した筋肉を緩めて、元に戻す復元力が弱ってきます。筋肉が固くなったままの状態です。
心臓も弱ってくると心臓の筋肉を緩める力が落ちてきます。心臓が拡張しなくなると、十分な血液を送り出すことができなくなり、その結果全身の臓器は酸素不足の状態になります。
血管についても同じです。ナトリウム利尿ペプチドと一酸化炭素は血管や腸管の筋肉を弛緩させます。こうしたホルモンにどれだけ反応できるかは、臓器のミトコンドリアの活性度に左右します。
年齢がいくと、筋肉の中のミトコンドリアの数が減少していきます。収縮する力がそれほど落ちてこない段階で筋肉が弛緩できなくなり、持久力が衰えてしまうのです。
ランニングやウォーキングなどの運動をしっかりして、ミトコンドリアがいつまでも元気であるようにしましょう。 このことで腸の筋肉の若さを保つことができるのです。
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